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新物質を効率的に見つけ出すための地図を開発、公開―物質生成の可能性が高い元素の組み合わせを即座に特定:物質・材料研究機構ほか

(2025年4月15日発表)

 (国)物質・材料研究機構、東京大学、(国)産業技術総合研究所、東北大学、京都工芸繊維大学の共同研究グループは4月15日、有用な新物質を効率的に見つけ出すための「元素反応性マップ」を機械学習で開発・公開したと発表した。

 自然界に存在する元素を複数選んで反応させると、多くの場合原子が規則正しく整列した無機化合物が得られる。実験室で取り扱える約80種類の元素から2つもしくは3つの元素を選んで化合物を作ると、その組み合わせは85,320通りにものぼり、その中に、未発見の新物質や新規材料が眠っている可能性がある。

 この期待に基づき、元素の組み合わせによって新物質を探索・発見しようという研究が進められているが、試した元素の組み合わせが全く反応しなかったり、生成した物質が既知のものだったりするといった例は少なくなく、新物質探索の効率化が求められていた。具体的には、合成の可能性をあらかじめ予想できるようにすることなどが求められている。

 研究グループは今回、新物質が発見できる可能性が高い未報告の元素の組み合わせを機械学習で特定し、新物質の探索を効率化することを試みた。研究の成果として「元素反応性マップ」を作成した。

 作ったマップは、3種類以内の元素の組における物質の生成可能性を、既知物質の有無とともに表示した、80×80のグリッド状の元素反応性マップ80枚から成る。80種類の元素を対象に、第2元素と第3元素の組み合わせを格子状に配置し、既知化合物の有無と未知化合物の存在可能性を視覚的に表示してある。

 3万以上の無機化合物の結晶構造データの機械学習によって作成、得られたマップはインターネット上で公開した。各格子にマウスを乗せると詳細情報が表示される仕組み。

 このマップを活用すると、未報告でかつ物質生成の可能性が高い元素の組み合わせを即座に特定でき、効率的な実験計画が可能という。このマップは「どんな宝が得られるか」を示すものではなく、「宝がありそうな場所」を示す地図であり、新たな発見を望む研究者にとって価値あるツールとなるとしている。