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生存に適した環境を無電力でモニタリング―ネムリユスリカ幼虫の乾眠からの覚醒(かくせい)を利用:理化学研究所ほか

(2022年7月21日発表)

 (国)理化学研究所と(国)農業・食品産業技術総合研究機構、奈良先端科学技術大学院大学の共同研究グループは7月19日、宇宙などの過酷な環境でも無代謝休眠の状態で生きられるネムリユスリカ幼虫を用いて、生物生存に適した環境を調べる技術を開発したと発表した。新たな生存圏探索への応用が期待されるという。

 人間活動の拡大に伴って、生存圏の探索が砂漠や極地といった極限環境だけではなく、宇宙へと広がり始めている。この探索では水や酸素、温度はもとより様々な環境化学物質を把握、計測する必要があり、それらの多種計測を、いかに少ないセンサーと少ないエネルギーで実現するかが課題とされる。

 研究グループはこの探索にネムリユスリカ幼虫が役に立つのではないかと考え、それを利用した無電力の生存圏探索デバイスを作製した。

 ネムリユスリカはアフリカの乾燥地帯に生息する昆虫で、幼虫は、乾期に干からびても死ぬことはなく、動きを止めて乾眠状態になり、水をかけると覚醒して成長を再開する。宇宙空間に放出しても、その後再覚醒することが分かっている。

 生存圏が見つかると幼虫は覚醒して動き出す。これを検知して生存圏を探り出すというのが新デバイスのアイデア。エネルギーハーベスティング(環境発電)の手法を応用すると、櫛歯型(くしばがた)の微小電極上に置いた幼虫の動きから電流の発生が得られ、幼虫の動きの周波数が測定できる。

 温度とpHを対象に計測実験したところ、実際に温度やpHの変化に応じて周波数が変わることを確認できたという。

 計測対象ごとにセンサーを用いなくても複数のパラメーターを同じデバイスで計測できるため小型化も可能で、しかも無電力でセンシングできるため長期の給電や通信が難しい極端環境でのモニタリングに極めて適したデバイスであるという。