高齢2型糖尿病患者の筋力低下―画像解析で早期発見:産業技術総合研究所ほか
(2025年5月27日発表)
(国)産業技術総合研究所と香川大学は5月27日、高齢の2型糖尿病患者に多い筋力や身体機能が低下する症状「サルコペニア」の有無を患者の歩行動作を3次元画像解析することで早期診断する技術を開発したと発表した。サルコペニアで身体活動が低下すると糖尿病がさらに悪化するおそれもあるため、新技術による早期発見で積極的な治療につなげられると期待している。
2型糖尿病は肥満や暴飲暴食、運動不足など生活習慣が大きな要因となって発症、糖尿病患者の9割以上を占める。高齢患者の場合、栄養不足による骨格筋量の減少や身体機能の低下などサルコペニアの発症リスクが高くなり、糖尿病が重症化してしまうおそれもある。
そこで研究グループはサルコペニアの早期発見を目指し、患者の歩行動作を3次元画像で解析する試みに取り組んだ。香川大学医学部付属病院に通院している65歳以上の2型糖尿病患者38人の協力を得て、歩行中の骨盤や足の関節(股関節、膝関節、足関節)の動きを「光学式モーションキャプチャー」で捉えて解析した。
実験では被験者に、はだしで約15mの直線路を本人が快適と思う速度で約5往復歩いてもらった。そのうえで、歩行中の被験者の骨盤や股関節、膝関節、足関節が動いている範囲の平均値を算出した。その結果、サルコペニアの糖尿病患者は、そうでない患者に比べて歩行速度や歩幅が低下していたほか、歩行中の足関節の運動範囲も狭いことが明らかになった。
これらの結果はサルコペニアを有する糖尿病患者の運動機能の低下を示しており、関節の運動範囲そのものが身体機能低下を表す新たなデジタルバイオマーカーとして有用である可能性を示しているという。
そのため今後、研究グループは「スマートフォンなどの簡易装置で得られる映像やセンサーのデータから、関節の動きや歩行パターンを推定・評価できるシステム開発を進め、医療現場や自宅などで容易にサルコペニアを早期発見できるようにしたい」と話している。