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ナラ枯れを起こす害虫を市販の園芸用殺虫剤で撃退―公園や緑地での市民活動による害虫駆除が可能に:森林総合研究所ほか

(2025年5月28日発表)

 (国)森林総合研究所と殺虫剤メーカーの大日本除虫菊株式会社(KINCHO)は5月28日、ナラ枯れの病原菌を運ぶ害虫を、市販のノズル型殺虫剤「園芸用キンチョールE®」で駆除できることを確認したと発表した。殺虫剤はホームセンターなどで容易に購入できるため、公園や緑地などの樹木に住み着いた害虫を、市民活動によって防除できると期待している。

 ナラ枯れは、カシノナガキクイムシが樹木の幹に1.5mmの穴を開けて穿入(せんにゅう)することで、樹木が枯れたり衰弱したりする。ミズナラやコナラなどの落葉ナラ類や常緑のシイ、カシ類などにも被害が広がっている。

 1980年代以降、主に本州日本海側を中心にナラ枯れが発生していた。近年は、関東平野や北東北、北海道南部に急速に被害が拡大し、温暖化に伴って被害地域は気温の低い高山や地域など北方に拡大する傾向にある。

 これまでは薬剤燻蒸などをしてきたものの、直接駆除する方法はなかった。

 森林総研とKINCHOは、カシノナガキクイムシが幹に穿入してから2週間後と4週間後に、殺虫剤を孔の奥(約3cm)に1〜2秒間注入したところ、どちらも95%以上を駆除できた。

 時間の経過とともに害虫は幹の奥部に侵入してしまい坑道(こうどう)は時間とともに長くなることから、穿入から4週間目までに殺虫剤を注入すると効果があるとしている。

 このほか、サクラ類に害を加える外来種のクビアカツヤカミキリの駆除にも使える。