[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

蓄膿症治療に手掛かり―鼻の中の細菌バランス回復で:福井大学/筑波大学

(2023年9月22日発表)

 福井大学と筑波大学は9月22日、近年増加している難治性の副鼻腔炎(ふくびくうえん)が鼻の中にいる細菌種のバランスの崩れが原因の一つになっていると発表した。特にフソバクテリウムと呼ばれる細菌が著しく減少していることが分かった。今後は細菌種のバランスを回復させることが治療につながるかを検証し、生活習慣の改善による予防法や新しい治療薬の開発につなげる。

 慢性副鼻腔炎は蓄膿症(ちくのうしょう)とも呼ばれ、かぜをきっかけに鼻の奥の骨に囲まれた空洞(副鼻腔)に細菌が感染して発症する。鼻の中に多数のポリープができてウミが溜まり、鼻詰まりと鼻汁が12週間以上続いてにおいも感じにくくなる。特に近年は難治性の慢性副鼻腔炎の増加が問題となっている。

 研究グループは今回、副鼻腔炎の手術を受けた143人を対象に鼻の中の細菌をDNA解析などによって詳しく調べ比較した。その結果、難治性副鼻腔炎患者とそれ以外の副鼻腔炎患者とでは、鼻の中にいる細菌などの微生物集団が異なっていることが分かった。特に難治性の場合は、気管や鼻の中の上皮細胞を保護する働きを持つリポ多糖と呼ばれる物質を作る菌が著しく減少していた。

 これらの結果から、難治性副鼻腔炎とそれ以外の副鼻腔炎の患者では鼻の中に共生している細菌などの微生物集団が異なり、細菌種やその代謝産物が変化することによって難治性副鼻腔炎を発症、悪化につながることが確認できたという。

 研究グループは、今後について鼻の中の微生物集団の状態を改善させることが難治性の慢性副鼻腔炎の治療効果につながるかを検証し、新しい治療法の開発につなげたいと話している。