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ダークマター検出に新手法―ミリ波で超軽量領域探索:京都大学/筑波大学

(2023年3月7日発表)

 京都大学と筑波大学は3月7日、宇宙の全エネルギーの4分の1を占めるとされる謎の物質「ダークマター」の新しい探索手法を確立したと発表した。ミリメートル単位の波長を持つ電磁波「ミリ波」を極低温でとらえる受信機を開発、ダークマターの中でも超軽量のものを探索できるようにした。今のところまだ検出には至っていないが、前人未到の質量領域での探索につながると期待している。

 ダークマターは通常の物質とはほとんど反応しないことが知られており、これまで直接的な検出には成功していない。そのためダークマター1個の質量も不明だが、これまでは陽子より重いダークマターを想定して探索が進められてきた。これに対し研究チームは今回、軽いダークマター候補の中でも特に光と微弱な反応をするといわれる超軽量の粒子「ダークフォトン」に注目、その検出手法の開発に取り組んだ。

 ダークフォトンは金属表面で微弱な光に転換され、その光が金属板の垂直方向に放出されると予想されている。そこで研究チームは、この微弱な転換光を検出できればダークフォトンの証拠になると考え、金属板から放出される転換光を検出する装置の開発に取り組んだ。転換光はミリ波領域の周波数を持ち、強度が非常に弱いため、装置全体を-270℃に冷やして熱雑音を極限まで抑えられるようにした。

 この装置を用いて、世界で初めて超軽量の質量領域でのダークフォトン探索実験を十日間にわたって実施することに成功、超軽量ダークマターを探る実験手法は確立したと研究チームはみている。ただ、これまでの実験ではダークマターの検出には至っていないという。

 今回の成果について、研究チームは「測定可能な周波数帯域を変えていくことで、さらなる前人未到の質量領域にわたってダークマターを探していくことが期待される」と話している。