ホルモン療法が効かなくなった乳がん細胞の増殖抑制へ―シソの成分の研究から乳がん治療の新標的を発見:京都府立医科大学/産業技術総合研究所ほか
(2026年5月1日発表)
京都府立医科大学と(国)産業技術総合研究所、関西医科大学の共同研究グループは5月1日、ホルモン療法が効かなくなった乳がんを抑える新たなメカニズムを見出したと発表した。ホルモン療法抵抗性乳がんの新たな治療戦略へ応用が期待されるとしている。
乳がんはエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンに依存して増殖するがんで、エストロゲンの作用を抑えるホルモン療法が標準治療として広く用いられている。しかし、ホルモン療法は初期には高い効果を示すが、一部の患者においては治療経過中にホルモン療法抵抗性が出現し、再発や治療困難な状態に陥ることが臨床上の大きな課題となっている。
研究グループは、身近な食品であるシソに由来する成分ペリリルアルコール(POH)が持つ抗がん作用に着目して研究を進めた結果、ホルモン療法抵抗性乳がんのがん細胞増殖抑制に関わるメカニズムの把握に成功した。
研究ではまず、POHがミトコンドリア内に存在するたんぱく質のANT2に結合することを見出した。このANT2の機能を解析したところ、ANT2の阻害により、細胞内エネルギー(APT)のバランスが乱れ、乳がんの増殖に重要なたんぱく質のエストロゲン受容体(ER)の発現が低下することを見出した。
また、ホルモン療法抵抗性乳がんでは、ER経路ではなく、脂肪酸伸長経路の異常が明らかになり、ANT2を阻害することで、この経路も抑制される可能性が示された。さらに、スーパーコンピュータを駆使してANT2に結合する物質をバーチャルスクリーニングしたところ、既存医薬品であるベネトクラクスおよびナイスタチンがANT2に結合する可能性が見出された。
これらの化合物は、乳がん細胞においてエストロゲン受容体の発現低下や脂肪代謝変化を誘導し、ホルモン療法抵抗性乳がん細胞の増殖を顕著に抑制した。ANT2を標的とする新たな乳がんの治療戦略への応用が期待されるとしている。



