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塩害に強いダイズの新品種―世界の需給安定化に貢献へ:国際農林水産業研究センターほか

(2022年9月8日発表)

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「蘇豆27」の種子(左)と成熟期の個体(右)©国際農研

 (国)国際農林水産業研究センターは9月8日、塩害に強く収量も多いダイズの新品種「蘇豆27 (sudou27)」を中国と共同で開発したと発表した。国際農研がブラジルのダイズから発見した耐塩性遺伝子を中国のダイズに組み込み、塩害の多い中国沿岸部でも栽培できるようにした。食料油への需要が急速に高まる中国のダイズ安定生産に役立つ。

 国際農研は世界の農業生産の安定化を目指し、各国と協力して耐塩性遺伝子を応用する作物の開発を進めている。今回は中国沿岸部の塩害地域で栽培可能なダイズの開発を目指し、中国江蘇農業科学院・工芸作物研究所と共同研究を進めた。

 研究では、国際農研がブラジルのダイズ品種から発見した耐塩性遺伝子Nclを持つダイズと中国のダイズを人工交配させ、新品種を育成した。その結果、中国江蘇省北部の主要な栽培品種「徐豆 (xudou13)」と比べても収量が6.9%、食料油のもとになる脂質含量が1.4%高い多収・高品質なダイズを得ることができた。耐塩性についても、徐豆の1.8倍に上った。

 国際農研は「耐塩性ダイズ品種の開発と普及によって塩害地域におけるダイズの生産を安定化させることで、世界のダイズ需要の安定化への貢献が期待できる」と話している。既にベトナムの研究機関とも共同研究を進めており、現地のダイズ品種に耐塩性遺伝子を導入して有望な新品種開発の見通しも得ている。