[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

アルゼンチンアリの大集団の侵入のカギは、エサの多様性か―外来アリ類の侵入予測や早期発見、防除策に役立つ:近畿大学/国立環境研究所ほか

(2021年2月3日発表)

 近畿大学農学部、(国)国立環境研究所、京都大学生態学研究センターの研究グループは、世界に最も広く分布するアルゼンチンアリの超巨大集団の「LH1」が、他のアルゼンチンアリ集団よりも多様な生物をエサにしていることを見つけたと、2月3日発表した。危険なヒアリ被害が日本でも広がった経緯があるが、類似の外来アリ類の侵入要因や早期発見、防除対策につながると期待されている。

 アルゼンチンアリは体長2〜3cmで体表は褐色。女王アリを中心にした集団(コロニー)が、複数の集団を形成して巨大な社会を作っている。旺盛な繁殖力で世界中に広がり、日本にも20年ほど前から輸入木材などに紛れて侵入し、国内各地で発見されている。

 在来アリや他の昆虫類、農作物を駆逐(くちく)して多大な被害をもたらすことから「特定外来生物」に指定された。毒は持ってないものの、屋内に侵入して日常生活に支障をきたす不快害虫でもある。一旦侵入すると根絶は非常に困難で、新たな侵入防止、初期対策が必要になる。

 世界各地に広がったアルゼンチンアリのほとんどは「LH1」と名付けられた超巨大な集団に属する。これ以外にも大集団の「LH2」など4種類があるものの「LH1」と比べると分布規模が大きくはない。同じアルゼンチンアリの種でも、侵略性に大きな違いがあるのはなぜかが大きな疑問になっていた。

 研究グループは、「LH1」の特徴的な性質が侵略性を知るカギになるとみて、エサの資源の多様性に注目して調査した。

 神戸市で「LH1」と他の3集団の複数の巣から働きアリを採取し、何を食べてきたかを「炭素・窒素安定同位体比分析法」で調べた。さらにエサとなるバッタ、アブラムシを可能な限り採取して同様に測定した。その結果、「LH1」はエサとして利用できる資源が同じか乏しい地域でも、他の3集団より多様な生物をエサとして利用できる雑食性であることが判明した。

 この特性は、「LH1」がもっとも侵略的な巨大集団であることを証明する有力な要因としての可能性がある。今回の成果は、外来種侵入の予測や、侵略的な生物の早期発見、対策を検討する上で役に立つとみている。