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異方性セラミックスでレーザー発振―結晶粒径を波長の10分の1に:北見工業大学/物質・材料研究機構ほか

(2019年7月29日発表)

 北見工業大学と(国)物質・材料研究機構、東京医科歯科大学は7月29日、結晶粒を焼き固めた透明セラミックスを用いたレーザーの発振に成功したと発表した。結晶粒の大きさを発振光の波長の約10分の1に抑えることで、これまで難しかった非立方晶系材料を用いて発振に成功した。医療や環境計測、加工など多様な分野に応用が広がるレーザーの開発に新たな可能性を開くと期待している。

 北見工大の古瀬裕章准教授、物材機構の金炳男グループリーダー、東京医科歯科大の堀内尚絋助教らの共同研究グループが、結晶の向きがバラバラな結晶粒を焼き固めた異方性セラミックスを透明化することに成功、レーザー発振も確認した。

 研究グループは、原料に生体材料としても研究されているフッ化アパタイトを選択、まず粒子径50nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の球状粒子を合成した。これを固めて高温で焼結する際に、結晶粒が大きく成長しないよう放電プラズマ焼結法を用いて焼結条件を高度に制御した。その結果、平均粒径が140nm程度の微細組織を持つ透明なセラミックスが作製でき、レーザーを発振させることにも成功した。

 セラミックスは多数の結晶粒を高温で焼き固めるため結晶の向きはそろわない。そのため結晶の異方性が少ない立方晶系の材料によるセラミックスでは透明化やレーザー発振は実現していたものの、フッ化アパタイトのように結晶方位がバラバラになる非立方晶系の結晶粒を用いたセラミックスでは困難とされていた。

 今回の成果について、研究グループは「粉体合成や焼結条件、レーザー発振の各過程でさらに改善の余地がある」として、今後はさらにこれらを最適化し、単結晶並みの品質を持つレーザーの実現を目指す。