隕石衝突の瞬間を再現―惑星の進化解明も:高エネルギー加速器研究機構ほか
(2020年9月7日発表)
高エネルギー加速器研究機構(KEK)、筑波大学、熊本大学の研究グループは9月7日、隕石が衝突した瞬間に何が起きたかを鉱物に高強度レーザーを照射して再現、衝突時の衝撃圧縮で生じる結晶構造の変化をナノ(10億分の1)秒単位で直接X線撮影することに成功したと発表した。過去の隕石衝突の履歴から、惑星の形成や進化の過程を解明するのに役立つと期待している。
実験に利用した鉱物はバッデレイアイト(ZrO2)。存在量は多くはないが地球表層から隕石までの幅広い岩石中に見られ、隕石衝突の履歴を知ることができる鉱物の一つとして知られている。同位体年代測定法を用いることで、その鉱物がいつ形成されたのか、いつ変形したのかを知る「時計」としても用いられている。
研究グループは、高強度レーザー光をこの鉱物試料に照射することで試料内部に衝撃波を発生させ、その衝撃波が伝播している瞬間の結晶構造の変化を撮影することに成功した。高エネ研の放射光実験施設で得られるナノ秒単位で点滅するX線パルスを利用することで、結晶構造の高速度の変化をとらえた。
その結果、衝撃波によって鉱物試料が圧縮され、結晶構造が高圧で安定した構造に変化する様子が初めて直接観察できた。その後、衝撃波が鉱物中を通過して圧縮が解放される過程で元の結晶構造に戻っていくことが分かった。また、この結晶構造の変化は3万3,000気圧を境に起きていることも明らかになった。
研究グループは、今回の研究で「バッデレイアイトがどれくらいの衝撃でどのように変形するかが解明された」として、隕石中や天体表面にある鉱物から太陽系天体の形成や進化の過程を解明するのに役立つとみている。