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セミの細胞内に真菌が共生していることを発見―日本のセミ24種の内の15種で見つける:産業技術総合研究所ほか

(2018年6月8日発表)

 (国)産業技術総合研究所と琉球大学は68日、共同でセミの細胞内に真菌(カビ)が共生していることを発見したと発表した。米国モンタナ大学と協力して得た成果で、調査した日本のセミ24種の内の15種が冬中夏草(とうちゅうかそう)由来の共生真菌を持っていた。

 セミは、熱帯や亜熱帯の森林地帯を中心に生息し、日本には移入種2種を加え36種が分布している。

 そのセミの細胞には、サルシアとホジキニアという2種の「細胞内共生細菌」が存在することがこれまでの研究で分かっているが、今回の研究でその2種以外に冬虫夏草のセミタケ類にごく近縁の「細胞内共生真菌」が共生していることが分かった。

 冬虫夏草は、キノコの一種。冬は虫に夏は草に見えることからその名がついたといわれ、中国では漢方薬や料理などに古くから使っている。

 今回の研究は、沖縄などの南西諸島を含む日本各地から採集したセミ24種を対象にして行われ、ニイニイゼミ、エゾゼミなど9種はこれまでいわれていた2種の細胞内共生細菌サルシアとホジキニアを保有していた。

 しかし、アブラゼミ、ヒグラシをはじめミンミンゼミ、ツクツクボウシなど残る15種はサルシアを持っていたがもう一方のホジキニアは持っておらず、代わりに酵母のような形の細胞内共生真菌を保有していた。

 今回の研究により多くのセミの共生細菌が共生真菌に代わっていることが初めて分かったわけで、研究グループは「寄生関係から共生関係への進化が繰り返し起こったことが実証され、寄生微生物と共生微生物の間の予期せざる深い関係が明らかになった」といっている。