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大学トップレベルサッカー選手の状況判断が早い理由を解明―ディスプレー画面使った実験で明らかに:筑波大学

(2018年1月30日発表)

筑波大学は130日、大学トップレベルのサッカー選手の状況判断が早い理由をディスプレー画面を使った実験により明らかにしたと発表した。

 サッカーでは、相手や味方の変化に応じた的確な状況判断を瞬時に行う情報処理が求められる。

 今回の研究は、全日本大学サッカー選手権で優勝経験のある選手と一般の大学生サッカー選手とを比較する形で、同大学大学院人間総合科学研究科博士課程の松竹貴大さんと、体育系の中山雅雄准教授、浅井武教授らの研究グループが行った。    

 現代のサッカーでは、チーム全体の高度な組織化で実現される攻撃と守備とが一体化してのゲーム展開が重視される。そのため、瞬時の状況判断を支える情報処理機能の向上を目的としたトレーニング方法が数多く提案されている。

 しかし、それらを評価する方法は確立されておらず、実戦の現場への適用が可能な学術的研究は多くない。

 今回の研究は、実戦のパス選択場面を想定して行われ、大学トップレベルサッカー選手は反応実行が早いだけでなく、反応抑制も早いことが分った。

 実験は、オフェンス選手3人とディフェンス選手2人の5人が写っている18枚の画像をディスプレー画面上にランダムに1秒間表示し、被験者がそれを見てパスを出すというもので、大学トップレベル選手13人と一般大学サッカー選手13人の26人に被験者となってもらって行った。

 その結果、①大学トップレベルサッカー選手群(ハイ・パフォーマンス群:H群)はパス選択を行う場面において一般大学生サッカー選手群(ロウ・パフォーマンス群:L群)よりも正確かつ早い運動・反応を示す、②H群はL群よりも初期視覚情報処理や刺激評価の処理時間が早い、③運動反応の出力の早さには反応抑制処理が関与しており、それがH群の脳内情報処理の優位性を特徴づけている、ことが明らかになったとしている。

 研究グループは「この研究により、これまで究明できていなかった競技力が高いサッカー選手の状況判断時の早さに関する情報処理のメカニズムの一部が示された」といっている。