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200年前に降った八王子隕石?―他の隕石の可能性も:国立極地研究所/国立科学博物館ほか

(2017年12月28日発表)

 国立極地研究所、(独)国立科学博物館など5機関は1228日、200年前に東京・八王子市中心部に落下した“八王子隕石”の一部とされる小片が他の隕石のものである可能性が出てきたと発表した。今回初めて詳細に分析した結果分かった。

 八王子隕石は江戸時代後期の18171229日に八王子市に多数降り注ぎ、長さ1m程のものを含む多くの破片が落下したという。当時の資料に多くの記録が残されているものの、隕石そのものは散逸して失われてしまった。

 今回分析したのは、京都の土御門家(つちみかどけ)の古い資料の中から1950年代になって発見された約0.1gの隕石小片。八王子隕石のことを書いた紙に包まれていたため、失われた八王子隕石の一部とみられていた。ただ、同じ資料の中に幕末の1866年に京都府京丹波町に落ちた曽根隕石について書かれた紙も入っており、その一部である可能性もあった。

 そこで研究グループは、八王子隕石とされていた小片の一部を光学顕微鏡のほか電子線やX線を用いて詳しく分析、曽根隕石の分析結果と比較した。その結果、八王子隕石とされていた小片は「普通コンドライト」と呼ばれる隕石で、曽根隕石と同じ種類であることが分かった。含まれる鉱物や希ガスの組成、地球に落下するまでに宇宙線にさらされていた時間「宇宙線照射年代」もほとんど同じだった。

 これらの結果から、研究グループは「小片は八王子隕石ではなく曽根隕石である可能性がある」とする一方、「八王子隕石と曽根隕石がたまたま同じタイプの隕石であった可能性も十分にある」と、最終結論は出さなかった。今後は広く一般にも呼び掛けて失われた八王子隕石の発見を進めたいとしている。