[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

高分子半導体に新合成法―有機EL素子を省資源・低環境負荷で生産も:筑波大学/物質材料研究機構

(2018年1月5日発表)

 筑波大学と(国)物質材料研究機構は15日、最新の画像表示技術として注目される有機EL素子などに必要な高分子半導体の新合成技術を開発したと発表した。既存技術に比べ合成工程を大幅に簡略化でき、従来技術で不可欠だった酸化剤の使用量も大幅に削減可能なため、生産工程の省資源・低環境負荷化に役立つ。新技術で合成した高分子が有機EL素子の発光材料として機能することも確認した。

 新技術は、高分子の原料になる化学物質「モノマー(単量体)」をいくつも結び付けて高分子にするクロスカップリング重合法の一つ。筑波大の神原貴樹教授、物材機構の安田剛主任研究員らの研究グループが開発した。

 従来は、単量体を結びつける(重合)のにスズやホウ素、ハロゲンなどを単量体の一部に結合させた原料を必要としたため、これらを事前に合成する必要があった。さらにそれらの重合反応の過程でできる余分な副生成物を反応後に分離・除去する必要があった。

 これに対し研究グループは、いわゆる亀の甲と呼ばれるベンゼン環を含む二種類の芳香族化合物のC-H結合(炭素—水素結合)を直接反応点に利用するクロスカップリング反応を用いることで、高分子半導体を得るための合成工程を二つ以上削減。さらに最終工程で必要な酸化剤に酸素を利用して酸化剤の使用量を大幅に減らすとともに、そのとき発生する副生成物を無害な水だけにすることに成功した。

 この反応では、異なる機能を持つ二種類のモノマーを原料に用いると、それぞれの機能を併せ持つ高分子半導体が作れるという。今回はこの方法で電子と正孔をそれぞれ電荷輸送に用いる高分子半導体を開発、薄膜化して電子素子を作成した。その結果、電子と正孔が再結合して発光する有機EL素子の材料として既往することが確認できた。

 今後さらに反応を効率化して汎用性を高めれば、有機電子光デバイスの普及に役立つ製造技術になると研究グループは期待している。