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青色LEDの材料を活かして、熱を電気に高効率に変換!:北海道大学/産業技術総合研究所ほか

(2017年11月21日発表)

 北海道大学、成均館大学校(韓国)、産業技術総合研究所は、青色発光ダイオードの材料である窒化ガリウム(GaN)の半導体二次元電子ガスが、熱を電気に変換する性能を著しく向上させることを発見した。半導体二次元電子ガスとは、プラスに帯電した静電気によって半導体の表面に電子を寄せ集めて溜めた層のことを言う。

 金属を熱しその内部に温度勾配が存在すると電圧が発生する現象は、ゼーベック効果と言われ、広く知られている。この効果を利用したゼーベック素子は、工場や火力発電所、自動車などから放出される廃熱を直接電気エネルギーに変換することができるクリーンなエネルギー変換技術として注目を集めている。

 熱電変換技術に利用できる半導体の熱と電気の変換の性能は、次の式で表現される。

 熱電変換性能指数をZT、熱電能をS(温度差1℃あたりに発生する電圧)、導電率をσ(電気抵抗の逆数)、熱伝導率(熱の伝わり易さ)をk、平均温度をTとすると、

    ZTS2×σ×T/k

である。

 性能が良い熱電変換材料は、温度差がつけ易く、電圧が大きく、電流が流れやすい材料である。これまで、重金属元素の一つであるテルルなどを用いることでZTが1をわずかに超える材料も開発されているが、高価であるばかりでなく、化学的・熱的な安定性が低く、それに伴う毒性などの問題点があるなど大規模な実用化への障害となっている。

 今回は、焼結体でなく、粒界が存在しない「単結晶」を用いて実験を行った。具体的には、高い電子移動度を示す青色発光ダイオードの材料である窒化ガリウム(GaN)に着目。一般的な半導体窒化ガリウムでは、大きな熱電の出力は得られないが、半導体二次元電子ガスでは、不純物を含まないため電子は高速で動くことができる。

 今回の結果が、そのまますぐに実用化につながるわけではないが、今後、電子を高速で動かしながら熱電能を高めるモデルは、実用化を控えた熱電材料を高性能化するための指針を与えることができると期待できる。