日本の代表的な小型渡り鳥の移動の経路明らかに―越冬地における保全活動への支払い意志額も調査:森林総合研究所ほか
(2025年8月4日発表)
(国)森林研究・整備機構森林総合研究所と北海道大学、オルデンブルク大学、ニュージーランド森林研究所など国内外10機関の共同研究グループは8月4日、日本の小型の渡り鳥キビタキとノビタキの渡り経路の調査を行うとともに、越冬地での鳥類保全活動に対する日本人の支払い意志額に関する調査を実施し、それらの結果を公表した。
キビタキとノビタキは日本で繁殖し、主に東南アジアで越冬する日本の代表的な渡り鳥。キビタキは主に広葉樹林に住む森林性、ノビタキは草原や耕地などに住む開放地性の小鳥として知られ、いずれも冬に南方にわたる。しかし、渡りの経路などは必ずしも明らかでない。
研究グループは今回、日の出日の入り時刻を特定し、そこから分かる緯度・経度から小鳥の位置を推定するジオロケーターという小さな照度計を小鳥に取り付け、翌年再捕獲するという方法で小鳥たちの移動経路を調べた。
その結果、キビタキは南西諸島とフィリピンを経由して南下し、主にボルネオで越冬、春はインドシナ半島と中国を経由して北上するという、季節によって渡り経路が異なる「時計回りの環状経路」が明らかになった。
ノビタキは、越冬地であるインドシナ半島と日本の間を中国経由で両季節とも移動していた。以前行った研究では、ノビタキはロシア東部を経由して南下するというルートが示されていたが、今回の調査で本州経由の新たな南下経路の存在が明らかになった。
研究グループは次に、キビタキとノビタキの越冬地と判明した東南アジアでの鳥類の保全活動に対する日本人の意識・関心を調査した。具体的には、森林・湿地の保護区の設立と環境保全型農林業の実施を内容とする鳥類保全活動に対する、日本人の支払い意志額に何が影響しているのかをオンラインアンケート調査した。
アンケートでは、キビタキ・ノビタキの渡り経路図と、東南アジアの保全団体の活動を示した写真を提示し、それらの提示が支払い意志額に及ぼす効果を検証した。また、自然との一体感の強さに関する質問をし、自然と回答者との心理的なつながりを評価した。
その結果、支払い意志額を最も左右していたのは回答者の自然とのつながりで、自然とのつながりが高い人ほど支払い意志額が高い傾向にあった。また、環境保全型農林業よりも保護区に対して高い支払い意志額が示された。
ただ、厳格な保護区の設立には困難も想定されることから、研究グループは、人間活動と保全の両立を図る環境保全型農林業の認知度向上への取り組みは重要と指摘している。