(独)産業技術総合研究所は6月9日、ダイヤモンドの同位体を薄く何層も積み重ねた「超格子構造」の積層薄膜ダイヤモンドを合成したと発表した。
超格子構造とは、異なる材料をnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールで何層も積層した構造のこと。炭素には、「炭素12」と「同13」の同位体(質量の異なる原子)があるが、炭素12だけでできたダイヤと、同13だけでできたダイヤを交互に積層し、ダイヤの超格子構造を実現した。
ダイヤは、硬くて、熱を良く伝え、化学的に極めて安定なことから産業分野で幅広く使われ、さらに最近は次世代半導体材料として注目されている。
今回の積層薄膜ダイヤは、炭素12だけ、同13だけを含む両メタンガスを原料にして「マイクロ波プラズマCVD(化学気相蒸着)」という薄膜成長法を使い、炭素12だけのダイヤ薄膜と、同13だけのダイヤ薄膜をそれぞれ30nmの厚さで交互に25層積層して超格子構造にしたもので、電子とホール(正孔)の閉じ込めに成功した。
電子・ホールの閉じ込めは、半導体材料として知られるガリウム・砒素のような異種材料(ヘテロ材料)の組み合わせでしか実現しておらず、ダイヤという単独材料(ホモ材料)での実現はこれが初めて、と同研究所ではいっている。
この研究成果は、6月12日発行の米国の科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載された。
No.2009-23
2009年6月8日~2009年6月14日