高エネルギー加速器研究機構は6月11日、1つの線形加速器から出た電子や陽電子(プラスの電荷を持った電子)の加速ビームを3つの円形加速器(リング)に並行して入射する「同時入射」に成功したと発表した。
つくば市(茨城)の同機構には、4つのリングがあり、世界第2位の加速エネルギーを誇る全長600mの電子陽電子線形加速器で加速した電子、陽電子を4つのリングそれぞれに入射して実験を行っている。そのため、各リングへの電子・陽電子ビームの入射は、それぞれ時間的にずらして行わざるを得ず、入射の切り替えには最短でも15分かかっていた。
線形加速器は、最大1秒間に50回ビームをリングに打ち込むことができ、その時間間隔は最短で0.02秒。今回の成果は、運転モードの見直しなどの工夫により、その0.02秒という短い時間内に電子を加速するか、陽電子を加速するか、どのリングに入射するかを選択、要求されたリングに入射するよう振り分けて、どのリングにもビームを中断なく並行して入射する「同時入射」を実現したもの。同機構では「エネルギーの異なる電子や陽電子を次々と目的の加速器に供給することで、運転効率が格段に高まる」と見ている。
過去に米国の研究所で今回と類似のシステムが稼動したことがあるが、「エネルギーが全く違うビームを同時に加速、振り分ける手法(の開発)は世界初」と同機構はいっている。
No.2009-23
2009年6月8日~2009年6月14日