超高速インターネット衛星「きずな」の実験成果と今年度の実験計画を発表:宇宙航空研究開発機構

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月22日、(独)情報通信研究機構(NICT)と共同で開発し打ち上げた超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」の平成20年度に実施した実験の成果と平成21年度実施予定の実験計画を発表した。
 「きずな」は、国内だけでなく、アジア・太平洋地域に世界最高水準の高度情報ネットワークを形成することを目指す実験用静止型通信衛星で、平成20年2月にJAXAが打ち上げ、同年7月から実験開始した。
【平成20年度の主な実験成果】
・国内初のハイパーミラー遠隔教育実験=場所が離れていても互いに臨場感のある教育ができる大阪大学開発の超鏡システム(ハイパーミラー)を大阪府と大分県の2つの小学校に設置、両校が合同で実施した授業の様子を「きずな」を用いてハイビジョンの双方向伝送を実施した(20年1月中旬に連続3日間実施)。
・アジア・太平洋地域遠隔教育アプリケーション実験=大容量衛星通信と地上ネットワークを融合した効果的な国際遠隔教育の実現に向け、日本の国立大学2校とフィリピン、タイの大学などとの間で教育コンテンツの高精細映像などを「きずな」経由で双方向伝送した(20年1月より原則隔週金曜日に定期的に実施。来年度以降も継続の予定)。
・多地点メッシュ型ネットワークによる国際講義実験=日本の国立大学とタイ、マレーシアの大学を「きずな」を使って互いに双方向リアルタイムで結び、各大学の教授が共通講座名で国際講義した(21年2月から3月にかけて8回実施)。
【平成21年度の主な実験計画】
・医療などのための生体情報衛星伝送実験=離島や山間部のような医師や専門家の少ない地域での医療やヘルスケアの向上のため、各種生体情報を超小型地球局から衛星経由で伝送する実験。NICT横須賀研究所(神奈川・横須賀市)に超小型地球局を設置、「人体無線網(Body Area Network)」と呼ばれるセンサー群が集めた生体情報を「きずな」経由で伝送。NICT鹿島宇宙技術センター(茨城・鹿嶋市)とタイの電子コンピューター技術センターで受信(21年4月上旬に1回目の3日間を実施。同月下旬に2回目を実施。評価結果を反映させて22年度も実験実施の予定)。
・硫黄島からの皆既日食高精細画像生中継計画=今年7月22日に硫黄島で約5分間見られる皆既日食の高精細観測映像などを生中継する。硫黄島に移動地球局を配置、「きずな」が衛星中継するナマ画像をNICTの小金井地球局(東京・小金井市)で受信、東京・大手町のセンター経由で東京・上野の国立科学博物館やテレビ局、インターネットなどに提供。めったに見られない皆既日食を「きずな」を通じて世界の人々と共有する。
・センチネル・アジア実験=アジア・太平洋地域での自然災害監視のための国際協力プロジェクト「センチネル・アジア」では、地球観測衛星などで得た自然災害関連情報をインターネットを介して共有しているが、今後のデータ配信の迅速化に向け、アジア・太平洋諸国の防災管理機関と「きずな」経由でデータを配信する実験を行う。21年7月にタイ、フィリピンと第1期実験を実施。第2期は22年度の予定。

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