創薬に威力発揮する大強度X線照射施設が稼働
:高エネルギー加速器研究機構

 高エネルギー加速器研究機構は4月20日、アステラス製薬(株)からの受託研究として開発を進めてきた「タンパク質X線結晶構造解析用ビームライン(AR‐NE3A)」が完成、同日から稼働を開始したと発表した。
 タンパク質の立体構造を基にした薬剤設計は、新薬開発における有用な手段となっている。近年、結晶構造解析手法の進歩に伴い、加速器で生じたX線をタンパク質の結晶に照射し、タンパク質の立体構造や化合物との複合体の構造解析を行うことなどで、化合物によりタンパク質の活性を阻害する仕組み(または促進する仕組み)を調べることが可能になってきた。
 最近は、さらに迅速に正確なデータを収集するために、大強度のX線ビームが得られる放射光ビームラインの実用化が望まれていた。
 同機構(茨城・つくば市)の放射光科学研究施設(フォトンファクトリー)では、創薬研究をより効率的に進めるため、大強度のX線による迅速なデータ収集が可能になるようAR‐NE3Aの設計・開発を行ってきた。AR‐NE3Aは、フォトンファクトリーにある既存のタンパク質結晶構造解析ビームラインよりも、強力なX線が試料に照射できるように設計されており、データ収集もより短時間で可能になった。
 さらに、測定の自動化を推進するための技術開発も行い、AR‐NE3Aにおいて1日当たり200個以上の試料の連続測定やデータ処理ができるようになった。自働的にデータの収集・処理をするために、試料交換ロボットなどの開発も進めた。
 AR‐NE3Aは、創薬研究ばかりでなく通常のタンパク質結晶解析用ビームラインとしても利用が可能なため、アステラス製薬だけでなく、一般の大学・公的研究機関や他の民間企業にも公開される。
 今後は、アステラス製薬が一定の割合のビームタイム(稼働時間の3分の1程度)を創薬研究に使用し、それ以外は大学や公的研究機関の共同利用実験や民間企業による施設利用実験にも利用されることになっており、創薬の分野ばかりでなく生命科学全般にわたって広く役立つことが期待されている。

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稼動を開始したAR‐NE3A(提供:高エネルギー加速器研究機構)