(独)産業技術総合研究所は3月5日、乳がん検診の一層の安心・安全を目指してX線による乳房撮影(マンモグラフィ)装置に用いるX線(マンモグラフィX線)の線量標準を確立し、マンモグラフィX線の線量計校正サービスを同日から始めたと発表した。同校正サービスのURLは、http://www.nmij.jp/service/P/calibration/。
わが国で乳がんの早期発見・治療のため、2000年度から導入されたマンモグラフィ検診の受診者は、2006年度で約163万人に達し、年々増加している。この検診では、乳房組織を撮影するのにモリブデンから出る低エネルギーのX線が使われるが、胸部レントゲン写真を撮るのに使われているタングステンから出るX線とは性質が異なる。タングステンから出るX線のエネルギーが広い範囲にわたって広がっているのに対し、マンモグラフィに使うモリブデンのX線は14.4keV(キロ電子ボルト)に鋭いピークを持っている。
このように性質の違うX線の照射線量を精度良く評価するには、X線の線質に合わせた線量標準が必要になる。しかし、国内にマンモグラフィX線の線質に合わせた線量標準がなかったため、これまでは胸部レントゲン写真撮影装置などに使うX線の国家標準で線量評価をしてきた。このため、医療の現場からは、より適正にX線照射線量の精度管理ができるマンモグラフィX線の線量標準の開発が求められていた。
今回のX線線量標準の開発により、マンモグラフィ装置の精度向上が見込まれ、正確でより信頼のおける線量評価が可能になった。
同研究所では、今後国際比較に参加してマンモグラフィ線量標準の国際的な信頼性を高めることを予定している。
No.2009-9
2009年3月2日~2009年3月8日