光半導体からの発光効率を20倍上げる方法を発見
:産業技術総合研究所/フランス国立科学研究センター

 (独)産業技術総合研究所は3月3日、フランス国立科学研究センターと共同で半導体材料中で発生した光が50%を超える効率で空気中に放出される現象を発見し、そのメカニズムを解明したと発表した。
 半導体材料の屈折率は、一般に空気より高いため、半導体と空気との界面では、光の全反射現象が起こりやすく、半導体材料の中で発生した光を高効率で空気中に取り出すことは極めて難しい。そのため、通常の平らな基板上に形成した半導体発光材料では、全発光量のわずか数%しか取り出せず、発光ダイオードなど半導体光デバイスの発光効率向上を妨げている。
 今回の成果は、微小な「V字型」の溝を刻んだ基板上に半導体発光材料を形成し、溝の形状を制御することで、50%以上の効率で光を取り出すことに成功したもの。様々な半導体光デバイス、特に照明・表示用の省エネルギー光源として有望な発光ダイオードへの応用が期待される。
  研究グループは、微小なV字型の溝を持つガリウム・砒素基板上にアルミニウム・ガリウム・砒素系のナノ構造を形成して、溝と溝との間の平坦面(平らな部分)の下に形成した量子井戸層と呼ばれる発光効率の高い部分の発光特性を評価した。その結果、平坦面の横幅を1μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)以下に狭くすると、発光の強度が急激に増大。横幅を約0.5μmにすると、発生した光の50%以上が空気中に放出されることを発見した。この効率は、従来の平坦な基板を用いた半導体発光材料の20倍に当たる。
 これまで、様々な光取り出し技術が開発されたが、効率や製造コストの面で多くの課題が残されていた。同研究所では、今後半導体発光材料の構造の最適化を行って、さらに高い光取り出し効率の実現を目指すと共に、この現象を利用した高効率発光ダイオードを開発したい、としている。

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V字型溝と、その断面構造の模式図。AlGaAsは、アルミニウム・ガリウム・砒素。GaAsは、ガリウム・砒素(提供:産業技術総合研究所)