複雑な配線を1本にしてしまう省配線化技術を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月25日、1本だけ配線したケーブルに、共通の通信インターフェースを付けた多くの機器を接続、このケーブルに複数のデータを時系列に順次伝送する「シリアルバス方式」を用いた省配線化技術を開発、実機で有効性を検証したと発表した。
 機器の制御用ソフトウェア変更の必要が無いので配線作業時間が大幅に短縮されて生産性が大きく向上、機器が小型軽量化する。産業用ロボット、車載電装品など、機器内で多数の制御用配線ケーブルを使う幅広い分野での応用が期待される。
 産業用ロボットや半導体製造関連装置などの産業機器では、一般に多数のセンサーやアクチュエーターなどを制御用コントローラーに接続する信号ケーブルが数百本に達し、機器組立て時間の半分以上がケーブル配線作業になるため、省配線化は重要な課題となっている。その対応策として「シリアルバス方式」が知られているが、ケーブルに発生するノイズに対する耐性不足、リアルタイム動作が保証されないなどから、これまでの産業機器で同方式は必ずしも普及していないのが実情だった。
 今回、同研究所は(財)北九州産業学術推進機構からの受託研究として、新たなシリアルバス通信システムを開発した。研究者は、(1)低コストで、(2)雑音に強く、(3)実時間性の高いシステムの実現を目指した。そこで、2本づつの信号線と電源線を束ねた1本のシリアルバスケーブルに機器の数に応じた通信インターフェースを接続、このインターフェースを介して機器のコントローラーと多数のセンサー、アクチュエーターなどと信号をやりとりする仕組みを開発した。
 この結果、瞬間的なノイズなら、ノイズ直後から通信が可能になり、通信が中断されるような強いノイズでも、ノイズ解消後0.3ミリ秒以内に通信が再開できるノイズに強い通信システムを実現した。
 また、独自の通信プロトコル(通信のやり取りのための取り決め)の採用で、毎秒200万ビットという高速で実時間性の高い通信が可能になった。通信インターフェースは、安価な汎用電子部品だけで構成できるので、従来よりずっと安くシステムが作れる。同研究所は今後、システムの完成度を高め、1年以内の実用化を目指す。

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