(独)産業技術総合研究所は1月22日、これまで機能が未知だったヒト細胞核中のRNA(リボ核酸)が、遺伝子発現調節において重要な働きをしていると予想されている核内のRNA-タンパク質複合体のコア(芯)となっていることを発見したと発表した。
ポストゲノム解析によって、ヒトやマウスのゲノム(全遺伝情報)の大部分から機能不明のRNA群が多数作られていることは分かってきた。しかし、これらのRNAは、タンパク質の生合成に関わることもなく、その機能は未だにほとんど明らかになっていない。
同研究所は、こうした機能不明のRNAの中から重要な「機能性RNA」の発見と、それを用いた応用技術の開発を目指している。今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業「機能性RNAプロジェクト」(平成17~21年)による支援を受けて行われた。
細胞核内にあるRNA-タンパク質複合体は、「パラスペックル構造体」と名付けられている。パラスペックル構造体には、RNA結合性の2個の制御タンパク質が存在することがすでに確認されているが、結合するRNAは見つかっていなかった。
研究グループは今回、パラスペックルにのみ存在するRNA (MENe/b RNA)を見つけ、このRNAのみを人為的に分解したところ、パラスペックルも消失することが確認された。2個の制御タンパク質が分散するところから、このRNAがパラスペックルのコア(芯)になっていることが明らかになった。また、ストレス処理によって分散したパラスペックルの再会合にも、MENe/b RNAが必要であることを確認した。
同研究所は、今後さらにMENe/b RNAの機能様式の解明を進めることにしており、多数の機能未知のRNA研究のさきがけとなるだけでなく、RNA-タンパク質複合体を標的とした創薬開発など新しい応用研究につながるものと期待されている。
この研究成果は、1月下旬に米国科学アカデミーの紀要の電子版に掲載された。
No.2009-3
2009年1月19日~2009年1月25日