(独)農業生物資源研究所は1月21日、植物においてDNA(デオキシリボ核酸)のメチル化によって遺伝子発現が活性化する新たな仕組みを発見したと発表した。
これまで遺伝子発現をコントロールする仕組みとして、DNAのメチル化を介して遺伝子発現が抑えられる現象(転写型遺伝子サイレンシング)が知られていた。この現象には、DNAの塩基配列の変化を伴わず、RNA(リボ核酸)によるDNAのメチル化や染色体タンパク質の変化によってもたらされる遺伝子発現機構(エピジェネティック制御)の一種が関わっていることが分かり、近年その分子機構も解明された。
今回、園芸植物のペチュニアを用いた花の形を決める遺伝子(pMADS3)についての研究で、これまで知られていた遺伝子サイレンシングの現象とは逆に、DNAのメチル化によって遺伝子発現のスイッチが入る(活性化する)ことを世界で初めて見出した。また、その分子機構の詳細も解明した。
さらに、DNAをメチル化したペチュニアを野生型のペチュニアとかけ合わせたところ、DNAの配列は変わらないのに、DNAのメチル化による遺伝子発現の活性化は、花弁がオシベ化する形質と共に、後の世代に伝わることも明らかにした。
今回の研究成果によって、環境の変化などにより後天的に獲得した性質が、遺伝的に固定して後代に伝わり得ることを示しており、分子機構がDNA塩基配列の変化ではなく、DNA配列のメチル化パターンの違いによる遺伝変異生成メカニズムとして、自然界における生物の進化に寄与した可能性を示唆している。
さらに応用面では、特定の遺伝子の発現を任意の組織で活性化させる技術の開発につながることが期待されている。
この研究成果は、1月19日の週に、米国科学アカデミーの紀要のオンオンライン版に掲載された。
No.2009-3
2009年1月19日~2009年1月25日