(独)物質・材料研究機構は12月16日、早稲田大学、筑波大学、㈱半導体先端テクノロジーズと共同で、MOS(金属酸化膜半導体)トランジスタの新電極材料として注目されている金属薄膜と高誘電率絶縁膜がしきい値電圧などのトランジスタの特性に与える影響を調べ、その制御技術を考案したと発表した。
MOSトランジスタには、半世紀近くにわたってポリシリコンとシリコン酸化膜が使われてきたが、それに替わり金属薄膜と高誘電率絶縁膜が浮上してきている。
これらの新電極材料を使えば、従来型電極を使ったトランジスタに比べて大幅な消費電力の低下が可能になるが、トランジスタ構造の極微細化で顕在化したトランジスタ特性のばらつきとどう絡んでいるのかはこれまで明らかにされていなかった。
そこで研究グループは、新電極材料の金属の結晶構造を幾通りか変え、その変化がトランジスタ特性に与える影響を調べた。
研究グループは、ルテニウム・モリブデン合金の組成を変えることで金属の結晶粒径や配向性を変え、結晶構造と特性のばらつきの関係を調べた結果、ばらつきはデバイスが小さいほど大きく、ばらつきの増え方は結晶粒径が大きいほど著しいことなどが分かった。
また、現在、金属ゲート電極としては最も有望と見られている窒化チタン膜を用いてその粒径の小さい結晶構造がばらつき抑制に優れていることを明らかにした。
さらに、炭素を添加すると、金属の結晶粒径が小さくなり、特性のばらつき防止に効果があることを確認した。この炭素添加技術は、より厳しい結晶構造の制御が求められる将来の回路作りに重要になるものと見ている。
No.2008-49
2008年12月15日~2008年12月21日