(独)産業技術総合研究所は12月18日、「22nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)世代IC(集積回路)」として2013年以降に実用化が見込まれている立体型新構造トランジスタ(フィンFET)の特性ばらつきの要因を究明、そのようなばらつきが存在しても安定動作が可能な新型SRAM(随時書き込み・読み出しが可能な半導体記憶素子)回路の試作に成功したと発表した。
フィンFETは、同研究所が提案して実用化を進めている新型のFET(電界効果トランジスタ)で、魚の鰭(ひれ=フィン)のような半導体構造を持つことからこう呼ばれる。
今回、研究グループは、同一寸法に設計したフィンFETを数多く作り、ソース電極とドレイン電極間で電流が流れ始める最小電圧(しきい値)のばらつきを実測した。さらに、ゲートの長さとチャンネルの厚さの寸法ばらつきを電子顕微鏡で計り、そのデータから金属(モリブデン)ゲート電極材料の仕事関数という重要特性のばらつきを同研究所が開発した計算式(フィンFETデバイスモデル)で推定した。
その結果に基づき、ばらつき耐性を向上した新型SRAM回路を設計して試作、原理実証に成功した。試作した新型SRAM回路の記憶保持部は、通常の3端子フィンFET4個で構成されているが、記憶保持部にデータを入出力する2個の選択トランジスタには、3端子型に電流駆動力調整端子を加えた4端子フィンFETが使われている。これで選択トランジスタの性能を変えることで、記憶データの読み出し時でも書き出し時でも、動作安定性向上が可能になった。
例えば、ばらつき耐性の指標(静的雑音余裕)を見れば、新型SRAM回路の読み出し時の動作安定性は通常型の2.3倍あることを確認している。
この成果は、22nm世代以降の新世代ICのトランジスタ特性のばらつき対策となるばかりでなく、SRAM生産の歩留まり問題の解消にも繋がる。
No.2008-49
2008年12月15日~2008年12月21日