(独)産業技術総合研究所は12月15日、京都大学、名古屋大学、東京大学と共同で、顕微鏡下で赤外線レーザー照射によって単一の細胞を加熱して、熱ショック応答を引き起こし、単一細胞内で調べたい遺伝子を発現させる新しい顕微鏡技術を開発したと発表した。 遺伝子の働きを調べる遺伝子機能解析は、現在「試験管内」での解析が主であるが、生物の個体内での機能を反映しているかどうかを証明するには、実際に遺伝子が働く「生体内(細胞内)」でその機能を明らかにすることが必要とされている。 研究グループは今回、ほぼすべての生物がもっている熱ショックに反応する細胞機構に着目し、顕微鏡下で赤外線レーザーの照射によってねらった細胞だけを加熱、それによって起こる熱ショック応答により、調べたいタンパク質を作らせる方法を開発した。これを赤外線レーザー誘起遺伝子発現操作法(Infrared laser evoked gene operator)の英文名にちなんで、「IR-LEGO顕微鏡」と名付けた。 赤外線は、細胞への障害がほとんどない上、効率よく水分子を温めることができるが、加熱しすぎると細胞は死んでしまう。狙った細胞だけを熱ショック応答させるためには、顕微鏡下の微細領域の温度変化を測定する技術が不可欠であった。 これまで単一細胞の温度を測定する方法はなかったが、今回緑色蛍光タンパク質(GFP)を利用してそれを実現した。GFPは、温度変化によって蛍光強度が変化するため、赤外線レーザーで単一細胞が加熱される様子を蛍光強度から解析し、光強度を制御して単一細胞だけに熱ショック応答を起こさせることに成功した。その例として、動物の発生や分化の研究に用いられている線虫(長さ1mm)を材料にして単一細胞での遺伝子発現を確認した。
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新開発の顕微鏡システム(提供:産業技術総合研究所) |
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