(独)産業技術総合研究所は11月11日、(株)船井電機新応用技術研究所と共同で、メソポーラスシリカと呼ばれるシリカ(二酸化ケイ素)の多孔体を用いた高速・高感度・長寿命の新しい酵素センサーを開発したと発表した。 これまで環境や生体試料のような多成分試料の中から、特定成分の存在量を高精度に定量する方法として、酵素の優れた反応性・選択性を利用する酵素センサーが知られている。これらは一般に、電極と酵素固定層から構成され、試料中の被測定物質と酵素の反応により生じる物質変化を、電極により電気信号の変化量として電気化学的に検出する。しかし、酵素センサーは、無機触媒を用いるセンサーに比べて安定性に欠け、センサー寿命が短く、実用化を進める上での障害となっていた。 共同研究グループは今回、シックハウス症候群の原因物質の一つであるホルムアルデヒドの測定のための酵素センサー計測システムを開発した。 メソポーラスシリカは、直径2~10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の均一で規則的な細孔を持つ多孔質シリカの一種で、細孔の中にタンパク質やDNA(デオキシリボ核酸)などの巨大分子を取り込むことができる。 今回の成果は、酵素としてホルムアルデヒド脱水酵素を用い、酵素の分子サイズ(8nm程度)にぴったり合った孔径のメソポーラスシリカを作り、その細孔に酵素を格納することでセンサー安定性を実現。さらに、電子伝達物質としてキノン(有機化合物の一種)を用いて酵素と電極の間で電子授受を行うことで、高感度検出、高速応答を達成した。この研究で、VOC(揮発性有機化合物)の一つとして知られる水中や空気中のホルムアルデヒドを高感度で直接的に検出することに成功した。 この研究成果は、様々な種類の物質の検出に応用が可能で、今後ガスセンサーなど小型で高性能なセンシングデバイスの実現に貢献することが期待される。 詳しくはこちら |  |
新開発のホルムアルデヒド測定用酵素センサー計測システム(提供:産業技術総合研究所) |
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