カーボンナノチューブ使い高感度ガスセンサーを開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は9月30日、超微細な筒状の炭素分子「単層カーボンナノチューブ(単層CNT)」を使って、汚染物質などを実時間(リアルタイム)で検出する高感度ガスセンサーを開発したと発表した。従来型センサーでは困難だった1億分の1%(10ppb=1ppbは10億分の1)レベルの二酸化窒素(NO2)を検出できる。製造が簡単で、材料コスト、製造コストの点でも、従来報告されている単層CNTガスセンサーに比べ格段に有利という。
 単層CNTは、直径が約1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)と極細なので、体積に対する表面積の割合(比表面積)が大変大きいため、表面に極微量のガスが吸着するだけで特性が大きく変わる。この特性を利用したのが単層CNTガスセンサーで、研究例は数多いが信頼性・低コスト・量産性などを兼ね備えた技術は実現していなかった。
 産総研は、分散安定剤などとして化粧品・薬品などに使われている「ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)」の水溶液に単層CNTを加え、超音波で分散させてから超遠心分離。CNTを含んでいる上澄み液を回転しているガラス基板に滴下、薄く拡げると、単層CNTがHPCに均質に混じった薄膜ができる。これを真空中で加熱処理すると、HPCが除去され、基板上に単層CNTが残る。単層CNTは、ナノレベルで均質に分散するため、僅かな量で十分な導電性が得られ、センサー1個当たりのCNT原料コストは7円以下という。
 これに真空蒸着で金のくし形電極を着けたのが新開発のガスセンサーで、電流の変化でガスを検出する。従来型の酸化物半導体ガスセンサーでは、我が国の環境省基準(40~60ppb)や米国環境省の基準(53ppb)のような低濃度のNO2は検出困難だったが、今回の新ガスセンサーなら十分対応できるとしている。
 産総研は、今後NO2以外のガスでも使えるように改良すると共に、民間企業への技術移転を進める。

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単層CNTの拡大写真(提供:産業技術総合研究所)