カイコ濃核病ウイルス抵抗性遺伝子の分離に成功
:農業生物資源研究所/東京大学

 (独)農業生物資源研究所と東京大学は5月22日、カイコ濃核病ウイルス抵抗遺伝子(nsd-2)の分離に成功し、ウイルスがカイコの中腸の膜タンパク質を利用して感染することを明らかにしたと発表した。
 カイコ濃核病ウイルスは、カイコの病気として古くから知られているが、カイコの中には、このウイルスを大量に与えても感染しない抵抗性をもつ系統があることも分かっていた。この系統のウイルス抵抗性遺伝子については、存在位置は明らかにされていたが、遺伝子の本体や機能は不明のままであった。
 研究グループは、近年急速に解析が進み、データベースが充実してきたカイコゲノム情報を利用することによって、この遺伝子の分離に成功した。昆虫におけるウイルス抵抗性遺伝子の分離としては、初めての成功例となった。
 また、遺伝子の働きを解析した結果、この遺伝子はカイコの中腸だけで発現する膜タンパク質の遺伝子で、ウイルスはこのタンパク質を介して細胞内に侵入することが推察された。しかし、抵抗性のカイコは、この遺伝子の塩基配列の後半部分を失っているため、完全なタンパク質を作れず、ウイルスが中腸細胞内に侵入できないと考えられた。また、ウイルス抵抗性のカイコに感受性のカイコが持つ遺伝子を、遺伝子組換えにより導入したところ、感受性が変わったことにより、この膜タンパク質が抵抗性の原因であることが明らかになった。
 この研究成果は、5月21日に米国科学アカデミー紀要のオンラインに掲載された。

詳しくはこちら