京都大学や(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)、(国)理化学研究所、広島大学などの研究グループは1月7日、X線新星「はくちょう座V404」が昨年6月中旬から7月初旬にかけて起こした「アウトバースト」と呼ばれる急激な増光現象を観測した成果を発表した。このX線新星は過去、十数年に1度の割合でアウトバーストしており、前回のアウトバーストが1989年だったので、2000年ころに再度アウトバーストするのではないかと思われていたが、そのころには増光せず、昨年、アウトバーストした。
■従来の「X線でしか観測できぬ」を覆す
「はくちょう座V404」は、距離が正確に分かっているブラックホールでは地球に最も近いブラックホールを主星とするX線連星。過去の観測からアウトバーストの際、X線で激しく光度変動するのが知られていた。今回のアウトバーストは最初、米国の観測衛星が発見し、次いで国際宇宙ステーションの日本の「きぼう」船外実験プラットフォームのX線監視装置がX線の増光を確認した。その直後、日本の研究チームが可視光での増光を発見、それから世界的なX線と可視光による観測が展開された。
今回、研究グループは国際変光星観測ネットワーク等を通じて大量の可視光観測データを得た。その結果、アウトバーストの最初から最後まで、断続的に規則的なパターンを持つ激しい短時間変動が見えていたことが分かった。また、衛星が観測したX線のデータとグループが得た可視光の観測データを比較・解析の結果、この可視光の変動が、これまではX線でしか観測されていないアウトバースト時のブラックホール近辺からの放射エネルギーの振動現象を現していることが分かった。
言い換えれば、これまでX線でしか見えないと思われていたブラックホールの”またたき(光度変化)”を可視光でも見られることが分かったことになる。また、この光度変動が、これまでの他のX線連星で同様の光度変動が起きた時の10分の1以下の低光度の時にも起きていることも明らかにした。今回の成果は口径数十cm程度の望遠鏡でもブラックホールの”またたき”が観測可能な事を示しており、今後のブラックホール研究に新境地を切り開いたとものいえる。