コアシェルナノワイヤ開発、キャリア移動を実証
―縦型の高速次世代トランジスタの実現に一歩
:物質・材料研究機構/米・ジョージア工科大学(2015年11月16日発表)

図

縦型トランジスタの模式図と、コアシェルナノワイヤ部分のモデル図(提供:(国)物質・材料研究機構)

 (国)物質・材料研究機構の国際ナノアーキテクトニクス研究機構は11月16日、米ジョージア工科大学と共同で、中心(コア)のゲルマニウム層を外側(シェル)のシリコン層で覆った同心円型のナノワイヤを開発し、ゲルマニウム層でキャリア(正孔)の移動を実証したと発表した。キャリアの移動は半導体に電流が流せることを意味し、さらにキャリア濃度を制御できることも実証した。高速な次世代トランジスタや、高効率の太陽電池を低価格に製造できる可能性が高まったとしている。

 

■低価格での作製が可能

 

 現在広く普及している平面型の電界効果トランジスター(MOSFET)は微細化が限界にきている。そこで高集積化として「立体構造」の縦型トランジスタが提案されていた。立体化にあたってはチャネル部分はナノワイヤの利用が考えられているが、ナノワイヤの直径が20nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下になると、キャリア生成のためにドーピングされた不純物によりキャリアの移動度が低下しまうという問題があった。また、キャリア濃度の制御も縦型トランジスタ実用化への課題であった。

 半導体に電流が流れるというのは、キャリア(電子や正孔)が移動することによって起こる。今回、研究グループは、真空装置を使った化学気相堆積(CVD)法で、シェルを連続的に成長させて製造した。キャリアはホウ素がドーピングされたシリコン層で生まれ、不純物のないゲルマニウム層へ流れ出て高速で移動する。ゲルマニウムはシリコンよりもキャリアが移動しやすく、しかも高速化が可能になる。また、ドーピングの量によってキャリア濃度を制御できることも実証した。

 開発したコアシェル構造は、シリコンとゲルマニウムの単純な元素だけを使うため低価格で製造できる。これからはコアシェル構造を利用したデバイスを作製し、特性評価など将来の高移動度トランジスタとしての可能性を実証していく。研究成果は、安価で効率のよい太陽電池への応用も期待できるとしている。

詳しくはこちら