筑波大学と(国)国立成育医療研究センターの共同研究グループは11月16日、これまで覆い隠されていたゲノム刷り込みのメカニズムの一端を明らかにしたと発表した。ゲノム刷り込みが維持される仕組みに迫る成果という。
■遺伝子改変マウスを作って調査・研究
ゲノム刷り込みは、ゲノムインプリンティングとも呼ばれる現象で、哺乳類などの配偶子で雌雄それぞれ「DNA(デオキシリボ核酸)メチル化」と呼ばれる処理がなされ、受精後の個体で父性・母性の遺伝子の使い分けがなされることを指す。
哺乳動物は父親と母親から1セットずつのゲノムを受け継ぎ、両親由来の遺伝子が等しく発現する。しかし、一部の遺伝子は父親、あるいは母親から受け継がれたときにのみ発現する。従ってゲノムは己が由来する親の性を記憶していると考えられている。
この記憶を生み出しているのは、DNAの一部がメチル基の付加で修飾される「DNAメチル化」と呼ばれる現象で、両親の精子や卵子が形成される過程でゲノムに付加され、受精後、大人になるまで維持される。
受精後初期の胚では、その再プログラム化(DNAメチル化などの修飾の消去・再構成)に伴って、ゲノム全体でDNAの脱メチル化が起こる。ところが、両親由来の記憶を担うDNAメチル化だけはこの過程から除外される。そのメカニズムはこれまで不明だった。
研究チームは受精後刷り込みメチル化に必須のDNA配列を欠いた遺伝子改変マウスを作って調査・研究したところ、少なくとも、精子でメチル化される制御配列「H19ICR」における両親由来の記憶は、受精後刷り込みメチル化活性によって、初期胚における再プログラム化から保護されていることが分かったという。