フローレス原人はジャワ原人から矮小化か
―身長・脳サイズ小さく「人類の脳の進化は大型化」の考え覆す
:国立科学博物館(2015年11月19日発表)

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左はジャワ原人、右がフローレス原人の身体サイズ。劇的な矮小進化が生じたと考えられる。ジャワ原人は身長165cm、フローレンス原人は110cmとしてある(提供:(独)国立科学博物館・海部陽介グループ長)

 (独)国立科学博物館の人類史研究グループの海部陽介グループ長らは11月19日、インドネシア・フローレス島で発見されたフローレス原人について、ジャワ原人あるいはその仲間から進化したことを示す証拠が得られたと発表した。これは、身長1.1mのフローレス原人が、身長1.7~1.6mほどのジャワ原人などから、脳と身体サイズが劇的に矮小化したことを示すと考えられるもので、これまで、脳の大きさは進化の過程で大きくなってきたとされていたが、条件によってはそうでない逆向きの進化があることを意味しているという。

 

■歯の形態を比較解析

 

 フローレス原人(学名:ホモ・フロレシエンシス)の化石は、2003年にインドネシアのフローレス島のリャン・ブア洞窟のおよそ7万~2万年前の地層から発掘された。身長は1mほどで小型の猿人のサイズ、脳の大きさも猿人並みだった。この原人は、孤立したフローレス島にどうやって渡ってきたのか、いつ、どうして絶滅したのかなど、謎が多い。

 研究グループは、歯の形態を比較解析した。世界各地で見つかった490人分の現代人(ホモ・サピエンス)と、アフリカやインドネシアの原人を中心とする化石人類との比較を行った。その結果、フローレス原人の歯は小型化しているが、形の上では、現代的(進歩的)な特徴と原始的な特徴が入り混じっていることが明らかになった。歯の特徴は、175万年前より新しいタイプの原人、特にジャワ原人と一番似ており、それより古い最初期の原人(ホモ・ハビリス)より進化していることが分かった。

 これまで、人類の脳は進化の過程で大きくなり続けきたと考えられてきたが、フローレス原人については大型化したジャワ原人が孤立した島で矮小化した、との説が優位になったという。条件によっては、これまで考えられてきたものと逆の脳の進化があるということを意味しており、原人にとって脳の大きさは絶対的に重要ではなかった、ということがうかがえるとしている。

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