筑波大学は11月20日、サッカー選手の状況判断の速さを脳活動レベルで計測したと発表した。サッカー選手は状況を素早く見極める処理が速い上に、反応を出力するまでの処理も速いことが確認されたという。
■複数の選択肢から瞬時に適切な判断
スポーツ選手の情報処理能力については、刺激を受けてから反応が起きるまでの、いわゆる反応時間（RT）が一般に用いられている。研究チームは今回、生理心理学の分野で用いられている「事象関連電位（ERP）」を指標にして、サッカー選手の状況判断時における脳内情報処理能力を検討した。
ERPは「ある出来事（事象）を脳が処理する過程に関連して出現する電位」を指す。脳波を測定し、脳波の波形から種々の成分を抽出、この成分を利用することで脳内の情報処理過程を検討する。例えば「N200」、「P300」と名付けられた早期の成分は認知にかかわる刺激の分類や評価を反映するため、RTでは明らかにできない、判断に伴う脳内の情報処理過程の詳細な検討に役立つ。
実験では全日本大学選手権で優勝経験のある大学サッカー部レギュラー選手8名（熟練者）と、一般大学院生8名（非熟練者）を対象に、難易度の異なる2つの課題について状況判断課題実施中の脳波を計測、熟練者と非熟練者の状況判断のスピードの違いを比較検討した。
その結果、より複雑な状況判断課題では熟練者の方が非熟練者よりもERP早期成分（N200、P300）が有意に速く、RTにおいても同様に熟練者が非熟練者よりも優位な短縮が認められた。
これらの結果から、サッカーの熟練者は非熟練者よりも状況を素早く見極める処理が速く、反応を出力するまでの処理も速いこと、すなわち複数の選択肢から瞬時に適切な判断を行う能力に長けており、中枢の情報処理能力がすぐれていることが示唆されたという。
