(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月24日、東京工業大学、東京医科歯科大学との共同研究で、地球を周回している国際宇宙ステーション(ISS)に接続する日本の宇宙実験棟「きぼう」の中で世界初の2カ月間におよぶメダカの長期飼育に成功し、無重力下で骨の量(骨量)が減少するメカニズムの一端を明らかにしたと発表した。骨量減少の原因解明は、老人性骨粗しょう症の予防や、長期の有人宇宙探査での重要な課題で、今回の成果は、動物モデルがない老人性骨粗しょう症の原因解明への足掛かりになるのでと期待される。
■老人性骨粗しょう症の原因解明なども
これまでのISSでの魚類飼育の最長記録は、2週間。宇宙空間での動物飼育実験は、難しいといわれてきた。今回のメダカの長期飼育は、その壁を破ったもので、「きぼう」に搭載したJAXA開発の給餌や飼育水の浄化・温度・流量・酸素などの環境維持が全て自動化された「水棲生物実験装置」を使って行われた。
「きぼう」で2カ月間長期飼育したメダカは、東工大大学院生命理工学研究科の工藤明教授らが開発した、造骨細胞と骨を溶かして吸収する破骨細胞(はこつさいぼう)の様子を同時に生きたまま観察できる「ダブルトランスジェニックメダカ」という遺伝子組み換えメダカ。「きぼう」での実験装置の設置や実験作業は、日米の星出彰彦・ケビン・フォード両宇宙飛行士が行なった。
その結果、2カ月間の無重力環境の影響としてメダカの喉の奥にある咽頭歯骨と呼ばれる骨の重量減少が観察され、骨を溶かして吸収する細胞である破骨細胞が無重力下で活性化し、多数の核を含んだ多核の細胞に分化する破骨細胞の多核化が進んでいることが分かった。
飼育実験に使った16匹のメダカには、交尾行動も認められ、「メダカが宇宙環境への適応に優れたモデル脊椎動物であることが実証された」といっている。
この研究成果は、英国の科学誌「ネイチャー」の姉妹紙のオンラインジャーナル「サイエンティフィック リポーツ」に9月21日掲載された。