(国)産業技術総合研究所と筑波大学の研究グループは9月25日、相変化メモリーの動作を超高速化する技術を開発し、動作メカニズムを解明したと発表した。相変化メモリーの相転移過程を1ピコ秒(1兆分の1秒)以下で制御でき、メモリー書き換え速度をこれまでより1000倍以上高速化できるという。新しいタイプの超高速相変化メモリーデバイスの創製が期待できるとしている。
■新しい原理による超高速デバイスに
相変化メモリーは、電源を切っても記録情報を保持する不揮発性メモリーの一種。パルス状レーザービームやパルス電流を入射すると光記録膜の温度が変化し、結晶とアモルファス相のスイッチングが起こる。結晶とアモルファス層では光の反射率や電気抵抗が異なるので、それを利用して記録・消去状態を区別する仕組み。
これまでにゲルマニウム、アンチモン、テルル元素から成るGST合金が開発され、DVDディスクの光記録材料として実用化された。その後、同合金を用いた相変化メモリーの開発が盛んになっている。
産総研ではゲルマニウム・テルル層とアンチモン・テルル層を繰り返し積層して超格子構造にする技術を開発・保有しており、相転移プロセスにおける原子変位の制御の研究などに取り組んできた筑波大学と協力し、今回、相変化メモリーの性能の飛躍的向上に挑んでいた。
研究では、超短パルスレーザー光を、マイケルソン干渉計を利用して励起パルス対にし、超格子薄膜に照射、一瞬で局所構造を変化させ、その状態変化をストロボ測定した。観測された超高速転移現象はこれまで考えられてきた熱的な転移過程ではなく、非熱的な転移過程であることが示された。
これは、相転移が熱伝導率に依存するのではなく、レーザーパルス対の時間間隔だけで制御できるという、まったく新しい動作原理の超高速スイッチング相変化デバイスの開発の可能性を意味するという。