最高水準の性能で小型の直流電圧標準器を開発
―本体と拡張ユニットに分離し簡単に持ち運び
:産業技術総合研究所/エーディーシー(2015年6月24日発表)

 (国)産業技術総合研究所の物理計測標準研究部門は6月24日、(株)エーディーシーと共同で、長時間、温度変化などにも極めて安定で、しかも軽量で持ち運びができる小型の直流電圧標準器を開発したと発表した。小型としては世界最高水準の性能があり、企業などの電圧標準器の校正作業が格段にやりやすくなる。

 

■電圧標準器の校正作業が容易に

 

 モノ造りには、高性能な電圧標準測定が不可欠となる。特にテスターや計測器、電子機器などの製品輸出では、「標準」は国際競争力の基盤といわれ、日本製品の高い信頼性の根幹ともなっている。製造業には必ず電圧標準器が設置され、製品の校正を厳密に実施している。

 日本の国家計量標準を担う産総研内には、高価な液体ヘリウムを使った世界最高精度の電圧標準器が設置されている。企業や大学などから、定期的に産総研の標準器との校正が繰り返されているが、ユーザーが産総研から「電圧を写し取る」校正装置は10kg以上もあって重く、電源を入れてから安定するまでに数十時間かかるなど使い勝手が悪かった。

 産総研とエーディーシーが独自開発した直流電圧標準器は、出力が7.2V(ボルト)と10Vの2種類で、いずれも経時安定性が年間100万分の1~2、温度安定性が1億分の2〜3と狂いが少なく、市販の最上位の標準器の性能を上回った。

 さらに手のひらに乗る大きさの小型脱着式モジュールの本体と、バッテリー駆動式の拡張ユニットとに分離し、小型化を図った。本体を拡張ユニットに装着すると、バッテリー駆動だけで長時間にわたって標準電圧出力が得られるなど使い勝手が格段に向上した。

 産総研は企業とともに、電圧標準を小型電子機器に積極的に組み込む用途開発も進めており、画期的な製品開発にもつなげたいとしている。

詳しくはこちら