血液中のタンパク質が認知機能低下の指標に
―約80%の精度で識別することに成功
:筑波大学/東京医科歯科大学ほか(2015年6月26日発表)

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アルツハイマー病への進行経過(提供:筑波大学)

 筑波大学医学医療系の内田和彦准教授、東京医科歯科大学医学部の朝田隆特任教授らの研究グループは6月26日、血液中に含まれるタンパク質「シークエスタータンパク質」が認知機能低下のマーカー(指標)になることを見つけたと発表した。

 

■早期からの「先制医療」実現に貢献期待

 

 厚生労働省研究班の調査によると平成24年の認知症高齢者は、462万人。その約70%は、脳に「アミロイドβペプチド」というタンパク質が蓄積し、正常な神経細胞が壊れて脳萎縮が起こるアルツハイマー病とみられている。

 今回の成果は、脳内でそのアミロイドβペプチドの排除に働くシークエスタータンパク質の血液中の変化が認知機能低下のマーカーになることを発見したもので、一般に使われている血液検査法で測定できる。

 特定の集団(コホート)を対象に長期的に経過を追跡する「コホート研究」という疫学調査手法を使い、①健常者②予備軍といわれる軽度認知障害(MCI)③認知症、を継続的に調査する「縦断研究」を2001年から3年ごとに続けて得た成果。

 筑波大は、健常者とMCIやアルツハイマー病を約80%の精度で識別することに成功していると発表、再現性も確認している。

 認知症を減らすには、早期に発見して発症前の早い段階で治療に入る「先制医療」が重要とされているが、予備軍のMCIは400万人もいるとされ、アルツハイマー病の原因物質アミロイドβペプチドは発症の20年くらい前から脳内に溜まりはじめるといわれる。

 筑波大は、このマーカーが認知機能低下の目印「血液バイオマーカー」になるとし、今後の先制医療の実現に貢献することが期待されるとしている。

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