成体の心臓でも増殖能力ある心筋細胞を同定
―梗塞を起こした心筋の回復治療などに光
:筑波大学/米・テキサス大学(2015年6月23日発表)

 筑波大学は6月23日、米・テキサス大学との共同研究で、胎児や新生児期の心臓ではなく、成体になった心臓でも増殖能力を保持している心筋細胞を突き止めたと発表した。心筋梗塞などで障害を受けた心筋を回復させる新たな治療法の開発につながる成果という。

 

■増殖能力の維持などが課題に

 

 哺乳類の成体の心臓は、心筋梗塞などで障害を受けると、自然に再生するということはない。ところが近年、成体の心臓にも増殖能力を保った心筋がわずかに存在し、ヒトの場合、生涯で約50%の心筋が置き替わっていることが明らかにされてきている。しかし、その実態は定かでなかった。

 研究グループは、増殖能力を保つ心筋細胞は低酸素状態に置かれることで酸化ストレスの発生を防いでいるのではないか、という仮説を基に、低酸素状態で活性化される低酸素応答因子「Hif-1α」というタンパク分子を安定化している細胞だけ識別しやすくした遺伝子組み換えマウスを作成し、仮説検証を試みた。

 その結果、Hif-1αを発現する低酸素状態にある心筋細胞が成体の心臓において増殖能力を保ち、成体の心筋の入れ替わりに寄与していることを解明した。

 さらに、これらの心筋は細胞のサイズが小さく、DNA(デオキシリボ核酸)酸化損傷のレベルが低いなど、胎児・新生児期に活発に増殖している心筋細胞と共通した特徴を持っていることをつかんだ。

 これらの知見は心疾患の新たな治療法の研究開発に有用であり、今後増殖能力の維持や細胞分裂の頻度を制御するメカニズムなどを分子レベルで解明したいとしている。

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