人工分子モーターの回転方向の制御に成功
―分子同士の結合が緩やかな超分子を用いて実現
:物質・材料研究機構/京都大学(2015年6月26日発表)

 (国)物質・材料研究機構と京都大学化学研究所の研究グループは6月26日、超分子を用いた柔軟な構造の分子モーターを作製し、分子モーターとしては初めて回転方向を切り替え、逆回転させることに成功したと発表した。生体内に備わっている天然の分子モーターの詳しい研究などに役立つという。

 

■自己組織化を利用し大量生産も

 

 超分子は複数の分子が弱い水素結合などの力によって結びついてできた複雑な構造を持つ分子。研究チームは今回、自己組織化の手法を利用して、2つのポルフィリンという有機分子が結合した超分子を作製した。

 超分子でできたこの人工分子モーターは、分子内に注入された電流によって一方向に回転する。回転方向は超分子の向きを示すキラリティの正負によって決まっている。

 電流を注入する際の電圧を負の値にしたところ、超分子内で分子同士の結合の組み替えが起こってキラリティが変化。その結果、超分子の回転方向が反転した。結合の組み替えと回転方向の反転は何度でも繰り返し行うことができるという。

 超分子の結合力は強くないので、回転中に時々構造が崩れるが、それでも元の形に復帰して回転を続ける。このような柔軟な振る舞いは生物が自らを修復する性質に非常によく似ているという。

 分子モーター作製に自己組織化を利用しているので一度に大量に作れる。今後はより多くの超分子を組み合わせてより複雑で高機能なナノマシンをつくり、天然のナノマシンにより近づけたいとしている。

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図

分子モーターが動作する様子を示す概念図。走査トンネル顕微鏡の探針から電流を注入することで、ポルフィリンの2つの分子が結合した二量体が矢印の方向に回転する(提供:(国)物質・材料研究機構)