血管新生促すゼラチン製の新多孔膜を開発
―高価で不活化しやすい細胞増殖因子の添加が不要に
:物質・材料研究機構(2015年6月16日発表)

 (国)物質・材料研究機構は6月16日、高価な細胞増殖因子を使わなくても、糖尿病で血流が不足している虚血部分などに新たな血管の形成を促すことができるゼラチン製の多孔膜を開発したと発表した。血管新生費用の削減が図れるだけでなく、再生用臓器組織での血管形成などへの応用が期待できるという。

 

■従来のものに比べ血管新生能5倍、組織接着性3倍に

 

 開発したのは、ブタ皮膚由来のゼラチンに、生体組織と接着しやすく、細胞増殖因子とも結合性が高いとされる分子を付けた「ヘキサノイル化ゼラチン」の多孔膜。

 ラットの皮下にこの多孔膜を埋め込んで血管新生能と組織接着性を調べたところ、気孔率を約60%に調整した多孔膜は、未処理のゼラチン多孔膜に比べて5倍の血管新生能があることが認められた。

 この多孔膜は生体内に存在する血管内皮細胞増殖因子をキャッチして内部に取り込む作用がある。多孔膜が酵素で徐々に分解されると、それにつれて血管内皮細胞増殖因子が徐々に放出され、血管新生が促進されることが判明したという。

 多孔膜を患部に留めておく組織接着性については、同じく気孔率約60%に調整した膜では未処理膜と比べ約3倍の接着性が認められた。

 新多孔膜は、高価で不活化しやすい細胞増殖因子を用いることなく、材料のみで血管ネットワークの形成を促進できるという特徴があり、自己治癒力を高めることで血管新生を促す新たな技術として期待できるとしている。

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図

多孔膜をラットの皮下へ埋入して7日後の組織像。赤丸は、新生血管を示す。左は、従来の多孔膜で、新たに形成された血管の量が少ない。右の開発した多孔膜には、多くの血管が形成されている(提供:(国)物質・材料研究機構)