筑波大学と東北大学の共同研究グループは6月15日、藻類がつくるオイル「スクアレン」をガソリンなどの燃料に変換する技術を開発したと発表した。これまで応用分野が限られていたスクアレンの用途拡大につながる成果で、新しいエネルギー資源としての実用化に弾みがつくと期待している。
■繰り返し使用可能な新触媒
筑波大の渡辺秀夫研究員、東北大の冨重圭一教授、中川善直准教授らの研究グループが開発したのは、重油と同じように分子量が大きくて使いにくいスクアレンを分解して分子量が小さく燃焼しやすい燃料用炭化水素に変換するための触媒。
研究グループは、金属のルテニウムとガラスの研磨剤などにも使われる酸化セリウムを組み合わせて新しい触媒を実現。この触媒を使ってスクアレンを240℃、60気圧で水素と反応させて分解したところ、ガソリンやジェット燃料並みの燃料用炭化水素が得られたという。
反応の過程で毒性のある有害な芳香族化合物はまったく生成しなかった。また、ガソリンやジェット燃料ではオクタン価や保存安定性などの点で優れていることが求められるが、今回スクアレンを分解して得られた炭化水素は、こうした高い安定性などの特徴を示す構造となっていることも分かった。新触媒は4回再使用してもまったく性能劣化せず、繰り返し使用できるという。
藻類が作る炭化水素は、石油のように枯渇したり地球温暖化の原因になる二酸化炭素を増やしたりする心配がないため、新しいエネルギー資源として注目されている。特に近年、効率よくスクアレンを作る藻類が見つかったため、研究が活発化している。
研究グループは「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト」の一環として都市下水を藻類で浄化しながらスクアレンを生産する研究に取り組んでいた。ただ、下水から生産されるスクアレンは用途が限られており、需要の大きいガソリンやジェット燃料に変換する改質が課題となっていた。