国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所は4月15日、酸味や早熟性などリンゴの品質や作りやすさを左右する重要な関連遺伝子が染色体のどの領域にあるかを特定したと発表した。その領域の存在を容易に検出する目印「DNAマーカー」も開発、新品種開発の効率化を可能とした。リンゴの品種改良が加速すると期待される。
■苗の段階で育種にふさわしい個体の選別可能に
リンゴの新品種開発では、異なる品種を掛け合わせて木が大きくなるまで5年以上待って実らせた果実を調べる必要がある。しかし、苗の段階で将来どのような果実を付けるかを推定できれば優れた素質の苗だけを選べるため、新品種開発が効率よく進められる。
研究グループは、リンゴ品種の「王林」と「あかね」を掛け合わせて生まれた137個体を栽培。その果実の糖度や硬度のほか、①早く実を付ける早熟性②収穫前の実の落ちやすさ③果汁の変色しにくさ④酸味の強さ―などの遺伝情報が染色体のどこにあるかを分析した。その結果、染色体上で早熟性を制御している領域が4カ所、実の落ちやすさの領域が1カ所、変色しにくさと酸味の領域がそれぞれ2カ所見つかった。
早熟性領域のうち1つは実の落ちやすさを制御する領域と非常に近い位置にあり、両方の性質は高い確率で同時に遺伝することが分かった。果汁の変色しにくさ酸味についても同様の領域があった。さらにこれら領域の目印になるDNAマーカーを開発、その有無を容易に検出できるようにした。
DNAマーカーを利用してこれらの制御領域を持つリンゴと持たないリンゴを比較したところ、早熟性と実の落ちやすさの制御領域が互いに近いリンゴでは、そうでないものより収穫期が1.5週早くなる一方、収穫前に実が落ちてしまう危険性が高いことが分かった。また、果汁の変色しにくさと酸味の制御領域が互いに近いリンゴは、そうでないものより果汁は変色しにくいものの酸味が強いことを突き止めた。
これらの結果から、DNAマーカーを指標に苗の段階で育種にふさわしい個体を選ぶことができるため、新品種開発の効率化が期待できるという。研究グループは今後、他のリンゴ品種でも同様の研究を進め、より広い育種目標に適した個体選びを苗の段階でできるようにしたいとしている。