1本の井戸で深さの異なる層から良質の水を採取
―塩水が侵入した地下水からの二重揚水技術を開発
:農村工学研究所(2015年3月24日発表)

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二重揚水の機器の構成図(提供:(独)農業・食品産業技術総合研究機構)

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の農村工学研究所は3月24日、1本の井戸内の深さの違う複数のところから同時に揚水する技術を開発したと発表した。水質の異なる複数の地下水層がある場所で井戸を掘った場合、採取したい水を揚水すると、その層の圧力が低下して、そうでない地下水が混ざり込んでくる。この二重揚水技術は水質の異なる地下水の拡散・混入を防ぎ、一本の井戸で良質な水の採取が可能という。

 

■空気パッカーを設置し異なる地下水の移動を遮断

 

 新技術は、風船のように袋を膨らませて止水する空気パッカーをポンプとポンプの間に設置して、異なる水質の地下水の移動を遮断するようにしたもの。

 深度別の水質検査結果に基づき、水質の良い深度にポンプの1つを、水質の良くない深度にもう1つのポンプを設置し、2つのポンプを同時に動かして揚水する。それぞれの揚水量は、水圧・水質センサーの測定値をもとに制御する。

 内壁が滑らかな金属や塩ビなどで仕上げられた管井(かんせい)を用いると空気パッカーで確実に止水できるという。深度の異なる水から同時に揚水するので、帯水層内の水質の良い領域と水質の良くない領域との間に圧力差が生じず、両者の混合が抑えられる。

 水質別に井戸を設置するとコストがかかり、水質の境界の深度が移動すると使えなくなるが、今回開発した二重揚水だとこれらの問題を解決できる。

 帯水層下部に塩水が侵入している沿岸地域や、津波によって表層付近の地下水が塩水化している地帯、地下水汚染によって帯水層の一部が使用できない地域などで良質な地下水を汲み上げるのに役立つとしている。

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