ヒトiPS細胞の研究用モデル細胞を高効率に作成
―マウスの胚から90%以上を「Epi幹細胞」に
:理化学研究所/蘭・ライデン大学(2015年3月26日発表)

 (独)理化学研究所は3月26日、再生医療への応用が注目されるヒトES細胞やiPS細胞とよく似た性質を持つマウスの細胞を効率よく作成・維持する技術を開発したと発表した。研究用にモデル細胞として利用すれば、再生医療に欠かせないヒトiPS細胞などを効率よく作成する技術や、さまざまな臓器や組織の細胞に変化させる分化制御技術の確立に役立つと期待される。理研バイオリソースセンターの阿部訓也チームリーダー、杉本道彦客員研究員がオランダのライデン大学と共同で開発した。

 

■細胞分化を抑制するタンパク質の働きを阻害

 

 ほ乳類では受精卵が細胞分裂して胚と呼ばれる細胞の塊となり、母親の子宮に着床して胎児に育つ。研究グループは今回、着床後のマウスの胚の一部「エピブラスト細胞層」から作った幹細胞(Epi幹細胞)がヒトの多能性幹細胞によく似ていることに注目、高い効率で作成し安定的に維持する技術を開発した。

 これまでは胚からエピブラスト細胞層だけを取り出すのが難しく、Epi幹細胞だけを効率よく作ることは困難だった。研究グループは今回、着床前の胚から作るES細胞(胚性幹細胞)で特殊なタンパク質が分泌され、細胞の分化を抑制していることに注目。着床後の胚から「エピブラスト細胞層」を採取した後、このタンパク質の分泌を抑える薬品を加えて培養し、分化の進んだEpi幹細胞の増殖を促した。

 その結果、培養細胞の90~100%がEpi幹細胞になった。従来この数字は0~20%にとどまっていた。また、Epi幹細胞は培養中に自発的に分化した細胞が混じるため、未分化な状態を維持することは困難だったが、新技術では培養中も未分化状態の均質なEpi幹細胞を維持できることが分かった。

 理研バイオリソースセンターは今後、大学や研究機関、企業に作成した均質なマウスEpi幹細胞を提供する予定で、iPS細胞などの研究の加速に役立てたいとしている。

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