筑波大学は10月24日、これまで計測が困難だったテラヘルツ(1兆ヘルツ)波の信号などが測れる「ヘテロダイン走査トンネル分光計測法」という局所精密計測手法を開発したと発表した。物質を構成する原子1つ1つの性質に関する情報が高速、精密に得られ、新しい物質の性質の発見につながることが期待できるという。
■原子1つ1つの性質を高速・精密に計測
物質の原子1つ1つを識別してその性質を調べる研究が近年精力的に進められている。しかし、検出感度を上げるための刺激が計測対象に擾乱を与えて計測できないなどといった問題が生じ、これまで実現していない。
研究グループは今回、宇宙の彼方からの極微弱なテラヘルツ波信号を検出している宇宙電波望遠鏡のヘテロダイン検出という検出技術に着目、この検出法を、原子1つ1つを観測できる走査型トンネル顕微鏡(STM)に導入し、新しい精密分光計測手法を開発した。
開発した新技術は極めて高い信号検出感度を備えており、エネルギー分解能が高く、計測対象に擾乱を与えずに原子レベルの空間分解能を実現した。従来は検出困難だったテラヘルツギャップと呼ばれる周波数領域の信号や、ノイズレベルの微弱な信号を高感度に検出できる。
今後この計測手法を用いて物質の微細構造情報にアクセスすることにより、新しい物質の性質の発見につながることが期待されるという。