ネオジム磁石の性能上回る新規磁石化合物を合成
―レアアース使用量を大幅削減しても同等以上の磁気特性
:物質・材料研究機構(2014年10月20日発表)

 (独)物質・材料研究機構は10月20日、ハイブリッド自動車のモーターなどに使われているネオジム磁石よりも少ないレアアース濃度で、同等以上の優れた磁気特性を持つ新たな磁石化合物を合成したと発表した。現在のネオジム磁石を上回る最強の磁石の開発が期待できるという。

 

■資源やコスト面でも優れる

 

 ネオジム磁石は32年前に佐川眞人氏が発明した磁石で、ネオジム2:鉄14:ホウ素1の化合物(Nd2Fe14B)を主成分とする。耐熱性を上げるためレアアース(希土類元素)のジスプロシウムを質量比で8%程度加えたものが、ハイブリッド車駆動用モーターなどに使われている。

 ジスプロシウムやネオジムなどのレアアースはコスト高で資源安定確保のリスクも高いため、レアアースをできるだけ使用せず、かつネオジム磁石を上回る性能の磁石化合物を作り出すことが、近年大きな研究開発課題になっていた。

 研究チームは今回、磁性を持たないチタンを含み、磁化性能の劣るネオジム鉄チタン窒素からチタンを除いた化合物の作製を試み、チタンをまったく含まない膜状のネオジム鉄窒素(NdFe12Nχ)化合物を合成することに成功した。

 この物質の磁気特性を調べたところ、最強のネオジム磁石化合物Nd2Fe14Bを上回る性能を持ち、特に磁気特性が550℃まで保持し、Nd2Fe14Bより200℃以上も高いことを見出した。これは、現行のネオジム磁石で使用している耐熱性改善のための高価なジスプロシウムが不要になることにつながる可能性がある。

 新規化合物はジスプロシウムを使わなくても優れた磁石特性が期待できるのに加え、現在のネオジム磁石化合物が質量比で27%ものネオジムを含むのに対し、新規化合物は17%で済み、レアアースの使用を大幅に削減できる。さらに高価なホウ素を使用しないため資源的、価格的にも有利という。

 研究チームは今後、安定な化合物の粉末を大量に作る技術や、その粉末を磁石の形に固めるプロセス技術などを開発し、実用化につなげたいとしている。

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